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年: 2023年
リチウムイオン電池モジュール
周辺部品で活用される
PP樹脂コンパウンド
トピックス
ポリプロピレン(PP)樹脂は最も密度が小さく軽量な熱可塑性樹脂のひとつで、スチレン系樹脂・ポリエステル系樹脂等と比較して耐薬品性が高い傾向にあり、比較的安価でもあることから様々な分野で利用されています。
ノバセルは独自のコンパウンド技術によりこのPP樹脂をベースとして、フィラー強化・難燃性付与・導電性付与等を施した高機能性樹脂コンパウンド『ダイセルPP』を製品展開しています。
今回はPP樹脂コンパウンドのメリットと、リチウムイオンバッテリー(LIB)モジュール周辺部品で活用される『ダイセルPP』製品を紹介します。
1. PP樹脂コンパウンド
のメリット
表1:各種樹脂の密度と耐薬品性の傾向
PP | PBT | PC | m-PPE | ||
---|---|---|---|---|---|
密度 [g/cm3] | 0.9 | 1.3 | 1.2 | 1.06 | |
薬品分類 | 酸 | ○ | △ | △ | △ |
アルカリ | ○ | × | × | △ | |
有機溶剤 | △ | ○ | × | × | |
油類 | ○ | ○ | △ | △ |
表1に各種樹脂の密度と耐薬品性の傾向をまとめます。
他の樹脂と比較して、PP樹脂は密度が小さく、また多様な薬品に対する耐性に優れることがわかります。
低密度であることは、同じ形状の成形体であれば、他の樹脂を使用する場合より軽量化が可能で、重量基準でみると樹脂使用量及びコストの削減につながります。
エンプラ製品の代替提案
PP樹脂をベースとした樹脂コンパウンド製品においても、このような傾向は特徴として引き継がれるため、エンプラベースの樹脂コンパウンド代替品としてご検討いただくことが可能です。
2. リチウムイオン電池
モジュール周辺部品で
活用される
PP樹脂コンパウンド
『ダイセルPP』
リチウムイオン電池は近年モジュール化による大型化・高出力化が進み、
電動車両の駆動用電源や、自然エネルギー発電における
送電安定化のための蓄電池などに利用の幅が広がっています。
当社のコンパウンド技術によって機能性を付与したPP樹脂コンパウンド『ダイセルPP』製品は、リチウムイオン電池モジュールにおける各部品の要求性能に合わせた材料の提案が可能です。
例えば、バッテリーモジュールユニット(BMU)やバスバー周辺部品では、ヒンジ特性を生かした非強化タイプの難燃グレード『PNAK2』『PNAH5』が利用できます。前者はハロゲン系難燃タイプ、後者は非ハロゲン系難燃タイプであり、燃焼挙動の特性による使い分けが可能です。両者は難燃特性により、風力発電用の蓄電設備向けLIBモジュール筐体で採用されました。
他には導電グレードのラインナップがあり、電磁波シールド(EMC)機能を補強することも可能です。バスバー周辺部品に向けては、銅害防止グレード『PG1K1』もラインナップしています。ダイセルPP製品群では、黒色やオレンジ色等調色が容易です。
想定部品 | グレード(例) | 樹脂特性 |
---|---|---|
BMU |
PNAK2, PNAH5 | ・難燃性 ・ヒンジ特性 |
PBG276, PB2N1 | ・EMC対応(導電性) | |
バスバーカバー |
PNAK2, PNAH5 | ・難燃性 ・良成形性 ・ヒンジ特性 |
PG1K1 | ・銅害防止対応 |
スペーサーやケース部品には、フィラー強化グレードを提案します。『PG6N1R』グレードはガラス短繊維強化品、『PT8N1』はタルク高充填グレードであり、薄肉成形を可能とする十分な流動性を備えています。
想定部品 | グレード(例) | 樹脂特性 |
---|---|---|
スペーサー |
PG6N1R, PT8N1 | ・剛性(フィラー強化) ・良成形性 ・長期耐久性 |
ケース |
PG6N1R, PT8N1 | ・剛性(フィラー強化) ・耐疲労性 |
PG6N5 | ・難燃性 ・剛性(フィラー強化) |
ダイセルPPでは、難燃グレード中心にUL94規格認証を取得しています。また『PG6N5』グレードは、とくに車載バッテリーパック筐体または周辺部品向けとして、最近開発した高難燃グレードです。このグレードについては2022年1月の記事で詳細に解説していますので、そちらも是非ご参照ください。
https://novacel.co.jp/topics/1/
表2:ダイセルPP 代表グレード基本物性
一般 | 難燃 | 導電 (EMC対応) |
|||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
非ハロゲン系難燃 | ハロゲン系難燃 | ||||||||||
タルク強化 | GF強化 | 非強化 | CB配合 | CF強化 | |||||||
特性 | 測定方法 | 測定条件 | 単位 | PT8N1 | PG6N1R | PG6N5 | PNAH5 | PNAS2 | PNAK2 | PB2N1 | PBG276 |
MFR | ISO1133 | 230℃ /2.16kg |
g/10min | 12 | 4 | 8 | 13 | 21 | 11 | 8 | – |
引張強さ | ISO527 | – | MPa | 25 | 85 | 82 | 20 | 28 | 32 | 30 | 50 |
曲げ強さ | ISO178 | – | MPa | 41 | 130 | 132 | 35 | 45 | 48 | 36 | 75 |
曲げ弾性率 | ISO178 | – | GPa | 4000 | 6000 | 8700 | 2200 | 1800 | 1900 | 1600 | 10500 |
シャルピー
衝撃強さ |
ISO179/1eA (ノッチ付) |
23℃ | kJ/m2 | 4 | 13 | 10 | 2.7 | 4 | 3 | 15 | 4.5 |
荷重
たわみ温度 |
ISO75 | 0.45MPa | ℃ | 133 | 160 | 160 | 116 | 108 | 110 | 92 | 143 |
燃焼性 | UL94 | – | – | – | HB | V-0 /1.5mm |
V-0相当 /1.5mm |
V-0 /0.75mm |
V-0 /0.75mm |
– | – |
体積抵抗率 | ASTM D991 | – | Ω・m | – | – | – | – | – | – | 1×100 | 5×10-2 |
表面抵抗率 | ASTM D991 | – | Ω | – | – | – | – | – | – | 1×102 | 1×102 |
密度 | ISO1183 | – | g/cm3 | 1.22 | 1.12 | 1.30 | 1.05 | 1.02 | 1.07 | 1.02 | 1.01 |
今後ますます需要が高まるリチウムイオンバッテリーモジュールの
周辺部材向け樹脂材料として、
各部品の要求性能に合わせた『ダイセルPP』製品を紹介しました。
他にも多種グレードを取り揃えており、個別開発のご相談も可能です。
詳しくは、以下よりご相談ください。