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年: 2022年
バイオ由来素材を活用した
樹脂コンパウンド製品
トピックス
ノバセルは日々多様化・複雑化・高度化していく市場ニーズに対応する高機能性樹脂コンパウンド製品を展開しています。用途実績は、自動車・日用品・家電OA・スポーツ等 幅広い分野にわたります。
今回はバイオ由来の素材を活用した機能性コンパウンド製品を紹介します。
1. 高機能PA
樹脂コンパウンドにおける
植物由来ポリアミド
の活用
『ノバロイA』・『ダイセルPA』は、要求特性に応じて各種ポリアミド(PA)樹脂の特性を
生かしながら設計開発したコンパウンド製品です。
植物由来ポリアミドも積極的に活用しており、高性能化・高機能化が可能です。
以下では実際に採用されている製品例を挙げて説明します。
[製品例1]ノバロイ XBG828:
植物由来ポリアミドベース
高剛性グレード
XBG828は植物由来ポリアミドPA610樹脂の低吸水性を生かしつつ、カーボン繊維を高濃度配合することで機械強度と寸法安定性を向上させた高剛性グレードです。
軽量性もあり、自転車部品に長く使用されています。
PA610樹脂は「ひまし油」が原料のセバシン酸(COOH-(CH2)8-COOH)とヘキサメチレンジアミン(石油由来)をモノマーとして製造されるポリアミド樹脂であり、炭素基準で63%がバイオマス由来です。
[製品例2]ダイセルPA AH39L4:
植物由来ポリアミドベース
高機能グレード
AH39L4は同じく植物由来ポリアミドPA610樹脂をベースに摩耗性を低減し、持続的帯電防止特性を付与したグレードです。合わせて剛性・耐衝撃性・耐熱性のバランスを整えました。
摺動性部品・回転部品に適しています。
特殊特性 | 測定方法 | 測定結果 |
---|---|---|
帯電防止性 (表面抵抗率) |
ASTM D257 | 1 × 1013 Ω |
低摩耗性 (動摩擦係数) |
往復摺動試験 | 0.1 gf |
- 試験条件
- 荷重: 100 g
- 摺動速度: 50 mm/sec
- 摺動回数: 1,000 回
- 相手材: 同材
表:植物由来ポリアミドベース製品物性表
特性 | 測定方法 | 測定条件 | 単位 | XBG828 | AH39L4 |
---|---|---|---|---|---|
引張強さ | ISO 527 | – | MPa | 160 | 84 |
曲げ強さ | ISO 178 | – | MPa | 270 | 95 |
曲げ弾性率 | ISO 178 | – | MPa | 12,800 | 3,100 |
ノッチ付シャルピー衝撃強さ | ISO 179 /1eA | 23 ℃ | kJ/m2 | 8 | 14 |
荷重たわみ温度 | ISO 75 | 1.80 MPa | ℃ | 200 | 120 |
0.45 MPa | ℃ | 220 | 210 | ||
密度 | ISO 1183 | – | g/cm3 | 1.16 | 1.18 |
2. セルロース
ミクロフィブリルを配合した
PP樹脂コンパウンド
『セルブレンC』
『セルブレンC』はポリプロピレン(PP)樹脂に、
木材パルプを解砕して得られるセルロースミクロフィブリルを独自技術により複合化した、
地球にやさしい熱可塑性樹脂材料です。
セルロースはグローバルな資源分布が均等のため、特定の国・地域に依存しません。また非可食性バイオ資源であり、食料資源に影響を与えません。
石油由来のPP樹脂に対し植物由来の素材を配合することで、製品(成形物)のバイオマス度向上に寄与します。またセルロース繊維は有機物で、PP樹脂と同様に燃焼するため燃焼残渣が無く廃棄物削減につながります。
セルロース繊維は代表的な無機繊維より低密度のため、高濃度でも軽量となります(セルロース 1.5 ⇔ ガラス 2.6)。
さらにタルクなどの無機フィラーとは異なり、鋼材(相手材)をほとんど摩耗させません。
表:無機繊維との特性比較
繊維種 | 密度(g/cm3) | 弾性率(g/d) | 強度(g/d) | |
---|---|---|---|---|
セルロース系 | 木材パルプ | 1.5 | 150〜550 | 7.8〜14 |
無機系 | 炭素繊維 | 1.8 | 1,450〜1,850 | 30〜37 |
ガラス繊維 | 2.6 | 330 | 14 | |
スチール | 7.15 | 330 | 6.3 |
図:セルブレンCと各種フィラー配合PP材との摩耗性比較
- 相手材料: 鋼材(S45C)
- 滑り線速度: 15 cm/sec
- 面圧: 10 kgf/cm2
- 接触面積: 2 cm2
- 摺動時間: 24 hrs
- 摺動距離: 12.96 km
セルブレンCの主なグレードラインナップには次表のような3種類があります。セルロース繊維濃度は最大で54%の配合が可能で、マスターバッチとしても利用できます。表のグレードはパルプ原料に木材パルプを採用しています。他に竹パルプ由来のセルロース繊維を複合化した製品も上市しています。
表:セルブレンCの主要グレードラインナップ
特性 | 測定方法 | 測定条件 | 単位 | CP114 | PBG150 |
---|---|---|---|---|---|
セルロース繊維濃度 | – | – | wt% | 40 | 54 |
引張強さ | ISO 527 | – | MPa | 46 | 50 |
曲げ強さ | ISO 178 | – | MPa | 80 | 83 |
曲げ弾性率 | ISO 178 | – | MPa | 4,600 | 5,500 |
ノッチ付シャルピー衝撃強さ | ISO 179 /1eA | 23℃ | kJ/m2 | 3 | 2 |
荷重たわみ温度 | ISO 75 | 0.45 MPa | ℃ | 155 | 155 |
密度 | ISO 1183 | – | g/cm3 | 1.07 | 1.14 |
セルブレンCは音響特性に優れ、楽器部品などを中心に採用されています。
現在、自動車内装用途などへの展開を見据えた射出成形用高流動グレードや建材利用を想定した押出用途での活用を検討しています。
今回はバイオ素材を生かした製品群として、植物由来ポリアミドを活用した高機能PAコンパウンドや、セルロース繊維複合樹脂『セルブレンC』を紹介しました。
これらの製品につきましては、以下よりご相談ください。
成形加工機洗浄用プラスチック
(樹脂用パージ剤) セルパージ
によるエンプラの洗浄
トピックス
プラスチック材料の成形において、同一の機械で多色、多材料を成形する場合、色替えや材料替えなどの段取り替え作業が必要となります。これら作業を効率よく進めるため、パージ剤が用いられます。
パージ剤に求められる性能として、
- ・洗浄力(少量で完全に洗浄できること)
- ・低残留性(成形機内に残らず、次材影響を及ぼさないこと)
があります。
今回の記事では、次の3点を解説し、当社製品の成形加工機洗浄用プラスチック『セルパージ』をご使用いただくメリットをご紹介します。
- 1. セルパージの作用機構
- 2. セルパージのおすすめグレード
- 3. 高温成形エンプラの洗浄に適したセルパージ
1. セルパージの作用機構
セルパージはシリンダーやスクリュー内壁の界面張力に着目したパージ剤です。
例えば、フッ素樹脂加工処理したフライパンの上に水や油があるとはじいて玉のようになり、食材のヤケ焦げ付きを防止できますが、これと同じ理屈を利用します。
セルパージは樹脂とシリンダー等の成型機内部の金属表面の2者間の界面張力を制御し、接触角θを大きくした状態に変化させることで、前材をスムーズに排出します。
粘度だけに頼らない設計で
安心
通常、パージ材は前材料よりも高粘度の樹脂を使用することが有効とされていますが、セルパージは粘度だけに頼らない設計となっておりますので、他のパージ材よりも残留しにくく、安心して次材をご使用いただけます。
ぐんぐん押し出すセルパージ
[ホットランナー金型も エアショットでパージ(洗浄)できます!] (音声有り)
以上から、当社製品の『セルパージ』は次のような特徴を有する、大変便利なパージ剤です。
- ・高洗浄・低残留であることから、段取り替えの時間を短縮できます。
- ・樹脂の廃棄量や材料のロスが減らせるので、環境にもやさしく、経済的です。
- ・異物不良の発生率を低減でき、異物や炭化異物の除去にも効果的です。
2. セルパージの
おすすめグレード
種々のエンプラに対しては
セルパージグレード 『NX-VN2』および『NX-VG2』 が有効です。
特に、NX-VG2は界面活性剤に加えて、ガラスフィラーが配合されており、フィラーがシリンダー表面をこすりながら流れる「カキトリ効果」も加わることで、幅広いエンプラに対して使用することができます。
3. 高温成形エンプラの洗浄に
適したセルパージ
さらに、これまで課題であった
高温使用時でのパージ剤のハジケによる作業環境の悪化
を解消するため、新たなグレード NX-VG3 を開発しました。
300℃以上での使用を想定し、配合を見直すことで、界面張力を生かした洗浄力や、自己排出性はそのままに、高温でもガス、ハジケが少なく、非常に扱いやすいグレードとなっています。
実際に使用されたユーザーからも「ハジケやガスの発生がなくなり、非常に扱いやすくなった」との声をいただいております。
セルパージ製品の各種グレードラインナップや、詳しいご使用方法は、
セルパージ特設サイトを是非ご覧ください。
電気配線網において
活用されるPA樹脂
特殊コンパウンド製品
トピックス
プラスチック材料の基本的な特性のひとつに絶縁性能があります。
なかでもPBT系樹脂は安定した絶縁性能があり、安全性のための難燃性能が付与されて電気製品に多く使用されます。
当社でも成形性や製品の寸法安定性が改良されたPBT/ABSアロイ樹脂『ノバロイB』シリーズを電気製品向け材料としてラインナップしています。
身近な生活や産業活動を支える電気配線網における
受配電設備ではさらに過酷な要求性能も
今回は電気配線網の安全を守る配線用遮断器(サーキットブレーカー)に着目します。
配線用遮断器は、容量の小さい家庭用「MCB」と中~大容量の産業用「MCCB」に大別されます [表1]。
プラスチック材料は筐体部品などに使用されますが、短絡時の火災発生リスクを最小化するために、やはり難燃性能が必要です。
表1.配線用遮断器の分類
配線用遮断器 | JIS規格 | 定格電圧 | 定格電流 | 定格短絡遮断容量 |
---|---|---|---|---|
住宅用:MCB (*1) | JIS C 8211 | DC300V以下 | 150A以下 | 25kA以下 |
産業用:MCCB (*2) | JIS C 8201-2-1 | DC1000V以下 又はAC1500V以下 |
– | – |
(*1) Miniature Circuit Breaker
(*2) Molded Case Circuit Breaker
とりわけ産業用MCCBの領域では、電気容量(遮断容量)が大きいため短絡時に非常に強い物理的衝撃が発生し、プラスチック材料には高い靭性が合わせて要求されます。
このような場面では、PBT系樹脂よりも
靭性に優れるPA系樹脂や熱硬化性樹脂の方が適しています。
ノバセルは
高靭性且つ高難燃性の
PA樹脂特殊コンパウンドを
開発
ノバセルは生産性で優位性のある射出成形用材料として高靭性且つ高難燃性のPA樹脂特殊コンパウンド『ノバロイA58SX』(以下、A58SX)を開発し、主にMCCBに分類される高容量配線用遮断器の筐体用材料として提供しています。
A58SXでは、高い靭性を発現させるために、剛性を維持しながら破壊伸びが大きくなることを両立させました。
高剛性のためにガラス繊維を高充填(50重量%)しながらも、樹脂マトリックスは延性が高められています [図1]。耐衝撃性においても、A58SXはPBT系樹脂よりも優れています [図2]。
※比較材料として家庭用MCBに使用可能な、ガラス繊維強化難燃PBT/ABS樹脂『B5526』(GF30%)の特性を引用
A58SXは、大電流を取り扱う産業用MCCB製品に適合するため、PA樹脂でありながら高い難燃性能を実現しています。
表2.A58SXの難燃性能
特性 | 測定方法 | 単位 | A58SX | 比較:B5526 |
---|---|---|---|---|
燃焼性 | UL94 | – | V-0/0.8mm | V-0/1.5mm |
熱線による発火(HWI) | UL746A | sec (PLC) | 120 (0)/1.0mm | 24 (3)/1.5mm |
高電流アーク発火(HAI) | UL746A | アーク数 (PLC) | 150 (0)/1.0mm | 35 (2)/1.5mm |
IECトラッキング(CTI) | IEC 112 | V (PLC) | 518 (1)/3.0mm | 210 (3)/3.0mm |
高い機械強度と難燃性を有するA58SXは、
実際のMCCB製品に課せられる過酷な大電流遮断テストでも
破損せずにクリアしました。
電気設備における配線機器は、通常長年にわたって使用されます。
設置場所の多くは屋内ですが、使用期間中の保守・点検作業において
確実に識別されることが重要となります。
A58SXは樹脂設計において耐候性が考慮されており、
また耐久性のあるレーザーマーキング印字も可能です。
スマートグリッド(次世代送電網)が整備されていく中で、
A58SXは電気配線網を構成する部品材料の一端を担っています。
今後、太陽光・風力などの再生可能エネルギー利用や、
EV・PHEVなどの電気自動車の普及によって
家庭で取り扱う電力規模が大きくなれば、
A58SXのような高靭性・高難燃性コンパウンドの活躍分野が
さらに広がることが予想されます。
ノバセルはこのような高機能特殊コンパウンド製品の設計開発に
より一層注力してまいります。
ノバロイ A58SX
高靭性高難燃
特性 | 測定方法 | 測定条件 | 単位 | |
---|---|---|---|---|
引張強さ | ISO527 | – | MPa | 148 |
曲げ強さ | ISO178 | – | MPa | 250 |
曲げ弾性率 | ISO178 | – | MPa | 15,000 |
ノッチ付きシャルピー 衝撃強さ |
ISO179/1eA | 23℃ | kJ/m2 | 16 |
荷重たわみ温度 | ISO75 | 1.80MPa | ℃ | 201 |
燃焼性 | UL94 | – | – | V-0 /0.8mm |
熱線による発火(HWI) | UL746A | 1.0mm | sec (PLC) | 120(0) |
高電流アーク発火(HAI) | UL746A | 1.0mm | アーク数 (PLC) | 150(0) |
IECトラッキング(CTI) | IEC112 | 3.0mm | V (PLC) | 518(1) |
密度 | ISO1183 | – | g/cm3 | 1.73 |
詳しくは、以下よりご相談ください。
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- エンプラアロイ樹脂 ノバロイ
軽量かつ高難燃!電動車搭載のバッテリー周辺部品用PP樹脂
トピックス
EVの多くは走行用モーターの駆動用電源としてリチウムイオン電池を採用しており、高出力化のため複数のバッテリーモジュールを内蔵したバッテリーシステム(バッテリーパック)が車室下部に収納されます。
バッテリーパックは概して大型であり、電費(EVにおける“燃費”)向上の観点から、軽量化が切実な課題となっていることはよく知られています。
一方リチウムイオン電池からなるEV駆動用バッテリーシステムに対しては、近年国際的または各国固有の安全性基準が設けられており、国連規格 UN ECE R100-02. Part II や中国 GB38031-2020 はその代表的なものです。
例えば UN ECE R100-02.Part II では、9項目の安全性試験が定められており、振動、衝撃、 圧壊、外部短絡、過充電、過放電、過昇温、ヒートサイクル、耐火、のような試験に合格しなければいけません。
参考: 国土交通省 HP 001151001.pdf (mlit.go.jp)
ノバセルは
耐火試験に着目
軽量かつ高難燃の
樹脂材料の開発に着手
ノバセルは、バッテリーシステム軽量化のため、バッテリーパック筐体または周辺部品の樹脂化を考察する中で、とくに耐火試験に着目し、軽量かつ高難燃の樹脂材料の開発に着手しました。
UN ECE R100-02. Part II の耐火試験では、バッテリーパックまたは車両の下部で燃料に点火し、トータル130秒間火炎に曝したのち、火源が取り除かれます。 爆発の兆候が無ければ合格
高難燃樹脂材料の開発においては、
樹脂成形物に130秒間火炎を近づける試験を実施し、
試験中と試験後の状態を確認しました。
当社の従来のハロゲン系難燃PPグレード(GF強化)は、
火炎を近づけると着火・燃焼し、試験後自己消火するものの、
燃焼部位は「穴」となり崩落しました。
試験前(平板状成形物)
試験中(30秒経過)
130秒後(試験終了)
試験後
新規開発した非ハロゲン系高難燃PPグレード(GF強化)『ダイセルPP PG6N5』は、
同じ燃焼試験において、火炎を近づけても赤熱するのみで、
試験後は赤熱部位が自己消火するだけでなく、形状も保持していました。
試験前(平板状成形物)
試験中(30秒経過)
130秒後(試験終了)
試験後
バッテリーパック筐体には、現在は主に金属材料が使用されていますが、
同じ形状で『ダイセルPP PG6N5』を用いれば
厚みの違いを考慮しても約20〜40%程度の軽量化が可能です。
このようなことから、『ダイセルPP PG6N5』を、
リチウムイオン電池を利用する
EVの駆動用バッテリーパック
筐体の一部または周辺部品用材料として推奨致します。
ダイセルPP PG6N5
高難燃軽量/低密度
特性 | 測定方法 | 測定条件 | 単位 | PG6N5 |
---|---|---|---|---|
メルトマスフローレート | ISO1133 | 230℃/2.16kg | g/10min | 8 |
引張強さ | ISO527 | – | MPa | 82 |
曲げ強さ | ISO178 | – | MPa | 138 |
曲げ弾性率 | ISO178 | – | MPa | 8,700 |
ノッチ付きシャルピー 衝撃強さ |
ISO179/1eA | – | kJ/m2 | 10 |
荷重たわみ温度 | ISO75 | 1.80MPa | ℃ | 150 |
荷重たわみ温度 | ISO75 | 0.45MPa | ℃ | 160 |
燃焼性 | UL94 | – | – | V-0 /1.5mm BK |
密度 | ISO1183 | – | g/cm3 | 1.30 |
詳しくは以下よりご相談ください。
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